農村地域であるトルコ・シャンルウルファ県ハラン市では、10〜11月にかけて盛大な綿花の収穫期となります。家族総出で畑仕事に励むこの時期は、女性も子どもも毎日、綿花の収穫に勤しみます。 ハラン市で生活するシリア人家族のほとんどが、農業によって生計を立てています。トルコ人の地主から許可を得て家賃を支払わず、テントや土壁造りの家で暮らす代わりに、わずかな労賃や無償で農作業に従事しています。 シリア人の世帯月収は7,000〜14,000円ほど。一面に綿花畑が広がるハラン市郊外の村々では、この綿花の収穫が1年のなかでもシリア人家族にとって重要な収入源となります。 子ども達も、ひとつひとつ綿花を摘み自分の背丈ほどもある麻袋に詰め込み、大きなトラックに積み上げていきます。秋になっても日中は陽射しの強いこの時期、1日を通して農作業を続けることは、かなりの肉体労働となります。 子どもが“子ども”として生活できない日常。 子どももおとなも、それを受容している環境。 子ども達のあどけない笑顔が、広大な畑のなかで輝いていました。
家族とともに約1ヶ月半の間、綿花の収穫に追われたシリア人の子ども達。 この期間、子ども達の生活リズムや負担、学習からのドロップアウトを防ぐため、テント教室はお休みしていました。 教室で学ぶ表情とはまた違う、険しい眼差しで農作業に取り組んでいた子ども達。家族の一員として、家族を支える責任感を感じているようでした。 11月後半になり、やっとクラスを再開することができました。
新しく移住してきたシリア人世帯の子ども達や、基礎教科を共に学びたいとやってきたトルコ人の子ども達も迎え、より一層賑やかとなったテント教室。
ハラン市郊外で生活するトルコ人家族の多くは土地や家屋、家畜を所有していますが、シリア人と同様、他の地主の土地で農作業をし、賃金を得る貧困世帯も少なくありません。
村々にはトルコ人学校があるものの、家族の農作業を手伝うトルコ人の子ども達の姿も、日常的に見られます。
ハラン市郊外の村々に住むトルコ人のほとんどがアラブ人であり、トルコ語とアラビア語を話すことができます。トルコ人学校では、トルコ語での授業となるため、アラビア語を学びたい子ども・学ばせたい保護者もいます。 シリア人の子ども達が、トルコ人の子ども達と交流し、いま住んでいるコミュニティで生き生きと過ごせるよう、トルコ人の子ども達の受け入れも少しずつ始めています。 テント内には、またきらきらとした笑顔が溢れています。